患者の知らないインプラント秘話②

専門的な話になりますが、インプラントの咬合(嚙み合わせ)についてお話をしたいと思います。インプラント治療の最終段階には歯(上部構造)がセットされますが、インプラントで作成される歯の嚙み合わせは、天然歯の嚙み合わせとは異なります。つまり天然歯には歯根膜というクッション機能をもった組織が存在しますので上下の歯を強く嚙み合わせると僅かな沈み込みが起こります。その幅は25ミクロン~50ミクロンといわれており極僅かな沈み込みなので私たちが生活する上でそれを感じることは殆どありません。一方、インプラントは骨と直接結合しているため、歯根膜というクッション機能はないので、噛んでも沈み込みは起こりません。そのためインプラントの場合、通常の嚙み合わせで歯を作成するとインプラント部分は咬合が高くなるので、骨は吸収されて破壊されてしまうためインプラント部分はその部分だけ(25ミクロン~50ミクロンだけ)嚙み合わせを低く設定して作成しています。つまり、軽く噛んだ時には上下は噛み合わず、強く噛んだ時にだけ上下嚙み合うように作成します。このようにインプラントと天然歯では構造、動きが異なるため、当初、インプラントの嚙み合わせに不自然さ、噛みにくさを感じる場合があります。しかし、これは慣れの問題なので、通常慣れてきます。

文書監修 岡田孝志(インプラント認定医。岡崎市インプラントインスティテュート主管)

患者の知らないインプラント秘話①

インプラントの長所やいいことばかり書いている文書や先生は多いのですが、インプラントの問題点を指摘している専門医は殆どいません。私の個人的な意見も含まれていますが、ここでは、インプラントの問題点、患者さんがあまり知らないインプラントの事実を伝えていきたいと思っています。今回は「インプラントの寿命」について書きたいと思います。日々診療していると、患者さんからよく質問されることですが、私がインプラント治療を始めた頃、もう30年以上も前の頃ですが、当時はインプラントは一生もの?と言われていました。(否定していた先生もいましたが)しかし、それから長い年月が経過し、インプラント治療をする先生は増え、それに伴いインプラント症例も増加しましたので、統計を出すことが可能になりました。それによるとインプラントの寿命は、平均で10年~15年と言われています。平均ですので、3年の方もいれば、20年の方もいますし、食生活 柔らかい食べ物を好む方もいれば、固い食べ物ばかり食べるかたもいます。また、歯軋りが強いかた、あまり歯磨きをされないかた、1日数回歯磨きされるかた等いろいろです。つまり比べる条件が一様ではありません。ですので、個人的な意見を言わせていただきますと、この数字はひとつの目安にはなりますが、あまり意味がないように思います。大切なことは、お口のなかを清潔にし、定期的に医療機関にてメンテナンスを受けていただくことだと思います。

文書監修 岡田孝志(インプラント認定医。岡崎市インプラントインスティテュート主管)